12. 7章 二人のいざこざにつて―「永続する問題」と「行き詰まりのサイン」docx
繰り返すケンカの正体。“永続する問題”と”行き詰まりのサイン”
はじめに:同じことで何度もケンカしていませんか?
「またこの話…」「何度言ってもわかってくれない」 そんなふうに、気づけばいつも同じテーマでケンカを繰り返していませんか?
これは、脳の「認知バイアス」による影響が大きいとも言われています。私たちは無意識のうちに、自分の価値観や考え方が”正しい”と信じ込む傾向があります。そのため、相手の違いを受け入れるより先に**「正しさを証明しよう」**としてしまうのです。
ジョン・ゴットマン博士は、夫婦間の問題には大きく2種類あるとしています。それが、**「解決できる問題(Solvable Problems)」と「永続する問題(Perpetual Problems)」**です。
さらに、永続する問題にうまく向き合えずにいると、関係は次第に**「行き詰まり(Gridlock)」**に陥っていきます。今回は、ふたりのすれ違いの”正体”を紐解きながら、今の関係を見直すヒントをお届けします。
1. 「永続する問題」とは、そもそもどんな問題?
永続する問題とは、価値観の違いや性格的な特性から生まれる、根本的に解決が難しい問題のことです。ゴットマン博士の研究では、なんと夫婦間の問題の69%はこの「永続する問題」であると示されています。
たとえば…
- 金銭感覚の違い(「貯めたい」vs「使いたい」)
- 家事や育児に対するスタンス(「完璧にこなしたい」vs「ほどほどでOK」)
- 親族との付き合い方や頻度
- 性的関係に関する価値観
- 休日の過ごし方(「アクティブに出かけたい」vs「家でゆっくりしたい」)
片付けや整理整頓へのこだわり(「常にキレイに」vs「少しくらい散らかっていても平気」)
こうしたテーマは、「どちらかが正しい」「間違っている」という問題ではなく、**ふたりの”人生観の違い”**に根ざしています。
2. 永続する問題は「解決」ではなく「向き合い方」がカギ
大切なのは、「解決できるはず」という考えを一旦手放すことです。この問題に対しては、「どうすれば心地よく共存できるか」を考えることが重要です。
たとえば、完全に意見を一致させるのではなく、
- 話し合う時間を決める(長引かせない)
- 一定のラインで妥協点を見つける
- お互いの立場を尊重し合うルールを作る
こうした工夫は、ゴットマン博士が提唱する**「リチュアル・オブ・コネクション(Rituals of Connection)」**にも通じます。
「リチュアル・オブ・コネクション」とは、**ふたりの間に親密さや安心感を育むための”習慣的な行動”のことです。**簡単に言えば、「ふたりの絆を深めるための小さな”お決まりの時間”や”儀式”」のようなものです。
たとえば、「毎晩5分だけ、今日の良かったことを話す時間をつくる」「月に一度はふたりでデートに出かける」など、ふたりの間にポジティブな習慣を取り入れることで、問題よりも”つながり”に意識を向けやすくなります。
3. そして、次の「行き詰まりのサイン」が出てきたら要注意
永続する問題にうまく向き合えていないと、関係は次第に「行き詰まり」に陥ってしまいます。
こんなサインがあれば、黄色信号です。
同じ問題で何度も平行線になる(話しても解決せず、むしろ話題に触れることがストレスになる)
話し合うたびに感情的に疲弊してしまう(話し合いの後、どっと疲れて無言になる)
「もう何を言ってもムダ」と、対話そのものを諦めている(沈黙が続き、会話を避けるようになる)
相手への基本的な敬意が薄れ、心の中で見下す気持ちが芽生えている(批判的な言葉が増える)
将来の話をしなくなり、ふたりの未来像が描けなくなっている(「この先どうなるんだろう」と漠然とした不安だけが残る)
心理学では、こうした状態を**「情動的な断絶(Emotional Disengagement)」**と呼び、関係の深刻な悪化サインとされています。
4. 行き詰まりから抜け出すために大切なこと
行き詰まりを感じたとき、最優先すべきは「問題を解決すること」ではありません。 まずは、安心して本音を話せる”感情的な安全基地(Emotional Safety)“をふたりの間に取り戻すことです。
たとえば、「問題解決の7ステップ」を思い出してみてください。 あのプロセスは、まさに「どうしたら安全に対話できるか」を考えるための手順でした。
また、リチュアル・オブ・コネクションの具体的な実践として、
- 「ありがとう」「助かったよ」を1日1回は必ず伝える
- お互いのいいところを見つけたら、その場で言葉にして伝える
月に一度、ふたりで「最近楽しかったこと」「嬉しかったこと」を振り返る時間を設ける
こうしたポジティブな習慣が、問題を「乗り越える」のではなく、**「一緒に抱えて生きる」**ための大きな支えになります。
さいごに
もし今、ふたりの間に行き詰まりのサインが見えているなら、一度立ち止まってみましょう。
「この問題は、本当に解決すべきもの?それとも、受け入れ方を変えるべきもの?」
その問いかけが、新しい未来への小さな一歩になるはずです。
永続する問題とは、なくすものではなく、ふたりで”どう向き合いながら生きていくか”を模索していく課題です。まずは、小さな「ありがとう」から始めてみませんか。
更新日: 2026年1月10日