柔らかい砂に描いたハート

25 より良い夫婦関係を築くための最後の秘訣:「自分自身を許すこと」

25 より良い夫婦関係を築くための最後の秘訣:「自分自身を許すこと」

心理学の観点から夫婦関係を科学的に分析してきたジョン・ゴットマン博士。彼の提唱する「七つの原則」は、多くのカップルの関係を修復し、より良いものへと導いてきました。しかし、これらの原則を実践する上で、根深く、そして強力な障害となるものがあります。それが**「批判」の終わらない連鎖**です。

今回は、この「批判」がどこから来るのか、そしてその連鎖を断ち切るための、最も重要で、そして最も内面的な秘訣について掘り下げていきます。

なぜ人はパートナーを「批判」してしまうのか?

ゴットマン博士の研究によれば、夫婦間で慢性的な「批判」が生まれる背景には、主に2つの源泉があることが分かっています。

① パートナーからの感情的な無反応

一つ目は、パートナーが感情的に応えてくれない状況です。

例えば、ある夫婦のエピソードを見てみましょう。

妻のナタリーは、夫のジョナが脱いだタオルをいつも床に放置することに不満を持っていました。最初は「タオルを掛けておいてね」と頼んでいましたが、ジョナがそれを無視し続けると、ナタリーの言葉は次第に変化していきました。

×「またタオルが床に置きっぱなしじゃない。本当にだらしない人ね!(人格への批判)」

このように、最初は特定の行動への「苦情」だったものが、相手からの反応がないことで、相手の人格そのものを否定する「批判」へとエスカレートしてしまうのです。この悪循環を断ち切るためには、批判する側だけでなく、批判される側も相手に向き合う勇気が必要となります。

② 自分自身への批判(自己不信)

そして二つ目、これが本記事の核心です。パートナーへの批判の多くは、実は自分自身への批判や不信感から生まれているのです。

別の夫婦、アーロンとコートニーの例です。アーロンは仕事で成功を収めても、自分自身を心から認めることができませんでした。「これではまだ不十分だ」という内なる声が常に彼を苛んでいたのです。

この「自分への厳しさ」は、やがて妻のコートニーにも向けられます。彼は、コートニーが持つユーモアのセンスや深い愛情、支えといった素晴らしい資質に目を向ける代わりに、彼女の欠点(感情的すぎる、社交的ではない、掃除が完璧ではない)ばかりを探し、指摘するようになりました。

なぜ、自分を認められないと、パートナーを批判してしまうのでしょうか。

心理学的に見ると、これは**「足りないもの」を探す思考の癖**が原因です。自分自身の欠点や不足している部分に常に焦点を当てている人は、同じレンズでパートナーをも見てしまいます。そして、どんなに素晴らしいパートナーであっても、完璧な人間はいません。その「欠けている部分」を見つけては、そこを攻撃してしまうのです。

批判の連鎖を断ち切る鍵

では、どうすればこの負の連鎖を断ち切れるのでしょうか。ゴットマン博士は、その答えは「パートナーを変えること」ではなく、「自分自身を受け入れ、許すこと」にあると断言します。

自分自身の不完全さを受け入れることができて初めて、私たちはパートナーの不完全さをも受け入れる余裕が生まれるのです。そのための具体的なステップが「感謝の習慣」です。

自分を許すための感謝のエクササイズ

これは、無理にポジティブになろうという話ではありません。思考の焦点を意識的にずらし、感謝する能力を鍛えるトレーニングです。

〇 ステップ1:世界に感謝する(1週間)

まずは1週間、身の回りのささいなことに意識を向け、心の中で感謝する習慣をつけてみましょう。

  • 窓から見える朝日
  • 雨が地面を濡らす音
  • 子供の無邪気な笑顔

「批判」とは、常に「ないものねだり」の思考です。このエクササイズは、あなたの思考の焦点を「欠けているもの」から**「既にそこにある素晴らしいもの」へとシフトさせる**効果があります。

〇 ステップ2:パートナーに感謝を伝える(1週間)

次の1週間は、パートナーに対して、1日に1回、心からの賞賛や感謝を伝えてみてください。

×「(いつもはやってくれないけど)今日はゴミ出ししてくれてありがとう」

〇「あなたがゴミ出しをしてくれると、本当に助かる。いつもありがとう」

大切なのは、それが心からの純粋な気持ちであることです。この習慣を続けると、パートナーの中に眠っていた素晴らしい資質に次々と気づくことができるでしょう。そして何より、人を許し、感謝する習慣は、あなた自身の心を穏やかにし、自分自身への過度な批判から解放してくれます。

私たちは、自分や相手の欠点ばかりに目を向けがちです。しかし、幸せな夫婦関係を築いている人々は、お互いの良いところに光を当て、それを育む術を知っています。

親が子供に与えられる最高の贈り物が「ごめんなさい」と間違いを認めることであるように、夫婦間でも、お互いの不完全さを許し合うことは、関係性を育む上で魔法のような力を持ちます。

パートナーへの批判が頭をもたげたとき、それはもしかしたら、あなた自身が自分を許せていないサインなのかもしれません。そんな時は、まず自分自身の心に目を向け、感謝の習慣を思い出してみてください。自分を許し、相手を許す。その先にこそ、より深く、満たされたパートナーシップが待っているのです。

更新日: 2026年1月7日

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