冷たいドリンクで一息つく場面

17-1 対立解決5ステップ③:頭が真っ白になる「洪水状態」からの脱出法

17-1 対立解決5ステップ③:頭が真っ白になる「洪水状態」からの脱出法

夫婦間の対立が激化し、建設的な議論が不可能になる状態を、ゴットマン博士は**「洪水状態(Flooding)」**と呼びます。これは感情的・身体的に圧倒され、頭が真っ白になる危険なサインです。心理学的な研究は、この状態が結婚生活に深刻なダメージを与えることを示しています。本記事では、この「洪水状態」から脱却し、冷静さを取り戻すための具体的な方法を解説します。

「洪水状態」とは何か?

議論がヒートアップすると、私たちの身体は原始的なアラームシステムを発動させます。心拍数が急上昇し、汗をかき、呼吸が浅くなるなどの生理的反応が起こります。

この状態では、パートナーの言葉を正確に理解したり、建設的な解決策を考えたりすることが極めて困難になります。そして、最も反射的で未熟な反応(批判、侮辱、自己弁護、逃避といった「四騎士」の行動)に走りやすくなるのです。

最初のステップ:自己沈静化(Self-Soothing)

洪水状態に陥りそうだと感じたら、まず議論を中断することが何よりも重要です。

20分間の休憩」を取ることが、生理的な興奮を鎮めるために不可欠です。

休憩中には、意識的にリラックスを促す活動に取り組みましょう。

  • 深呼吸に集中し、ゆっくりと深く息を吸い込み、吐き出す。
  • 全身の筋肉を一つずつ意識的に緩める
  • 自分が最も穏やかになれる場所(例:静かな森、湖、ビーチ)を鮮明に思い描く

大切なのは、この休憩中に「パートナーのせいでこうなった」「相手が間違っている」といった否定的な思考を避けることです。あくまで心を落ち着かせることに集中しましょう。

次のステップ:相互沈静化(Soothing Each Other)

自分が落ち着いたと感じたら、次にパートナーを沈静化させることを試みましょう。これは、パートナーに対して「あなたが落ち着くと、私も落ち着く」という**「逆条件付け」**を行うことで、関係性におけるポジティブな関連性を築く効果があります。

相手の気持ちを和ませるために、以下の問いかけが有効です。

  • 「何があなたを洪水状態に陥らせるの?」
  • 「私にできることで、あなたを落ち着かせることはある?」

〇 良い例:パートナーが感情的になっている時、「つらかったね。私にできることは何かな?」と尋ねる。

× 悪い例:パートナーが感情的になっている時、「なんでそんなに怒ってるの?落ち着いてよ」と責める。

最終ステップ:妥協(Compromise)

冷静さを取り戻した上で初めて、問題解決のための「妥協」が可能になります。親密な関係において、常に自分の意見を押し通すことは不公平感を生み、関係を損ないます。

妥協の前提にあるのは、**「パートナーの影響を受け入れる」**というゴットマン博士の第四原則です。相手の意見や願望に耳を傾け、オープンな姿勢で共通の解決点を見つけることが重要です。

〇 良い例:

夫:「週末はフットボールを見たいけど、君はどう?」

妻:「フットボールもいいけど、最近お互いのこと話す時間ないから、今日は映画でもどうかな?」

夫:「なるほど。じゃあ、前半だけ見て、その後は映画にするのはどう?」

妻:「それいいわね!そうしましょう。」

× 悪い例:

夫:「週末はフットボールを見る。邪魔しないでくれ。」

妻:「またフットボール?いつもそう!私の意見なんてどうでもいいんでしょ!」

妥協とは、どちらかが「負ける」ことではありません。お互いの「譲れない部分」と「柔軟になれる部分」を理解し、尊重しながら、双方が納得できる「一時的な妥協点」を見つけることです。これにより、問題が関係を支配するのを防ぎ、平和的に共存する道が開かれます。

まとめ

「洪水状態」から脱出し、建設的な対話を可能にするには、まず自分自身を落ち着かせ、次にお互いをサポートすることが不可欠です。そして、その上で「妥協」を通じてパートナーの影響を受け入れることが、健全で幸福な結婚生活を維持するための鍵となります。


参考文献

“The Seven Principles for Making Marriage Work”, John M. Gottman, Ph.D., 1999

更新日: 2026年1月7日

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